道迷いの繰り言 その続き

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 菅沼誠也 『ストップ☆まりかちゃん!』 (電撃文庫)

ストップ☆まりかちゃん! (電撃文庫)

ストップ☆まりかちゃん! (電撃文庫)


〜引き締まった腰に,指で突いたような小さなおへそ.
卵生か無性生殖で殖える瞳ちゃんに,本来あるはずのないものだけど.
「あ,お腹のそれはね,お尻と消化器を兼ねているの」
「……消化器?」
嫌な予感がして,それをまじまじと見た,その時.
へそからでろりと飛び出したものが,僕の足に絡みついた.
「――胃袋かあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 電撃文庫の新人が放つ,美少女満載の萌えコメディ.ただし,ヌルヌルとグチョグチョとファージとナナフシその他が,当社比400%増し.ジャンル的には…SF(少し・不思議)といったところか.


 16歳にして生物工学の才を認められ,政府の保護下で日夜開発にいそしむ美少女御堂鞠歌.彼女と同居する平凡な高校生,遠野星也の生活に平穏という文字はない.今日もまた怪しげな生物に襲われる彼の悲鳴が空に響いていく….

 改造,開発の元ネタとなる生物ごとに分けられた4編を収録.ストーリーとしては高校生の日常生活や,友達との旅行などといった学園コメディの王道ともいえる内容である.しかし,そこに乱入する鞠歌の「作品」たちにより,一種独特の雰囲気が演出されている.たとえば冒頭の引用,実は主人公が誕生日プレゼントの美少女(?)に迫られているシーンだったりするのだ.他にもヒロインが腐臭を放つドロドロを頭からかぶったり,変形する異形のモノと一体化したり….夜野みるら氏による可愛らしいイラストとの落差もあいまって,キモいことおびただしい.

 あとがきにて著者曰く,『美少女満載の萌えコメディを目指して書き始めた本作品ですが,なぜかキモイキモイと賞賛にも似た恨み節が届いております.』とのことだが,それもむべなるかなといったところである.いやまさか気持ち悪いクリーチャーに萌える日がくるとは思ってもいなかった.


 ほうぼうに散りばめられたギャグが若干上滑りしているような気もするが,「萌え」と気持ち悪さが入り混じったこの路線は大好きなので,ぜひとも続編を希望したい.