道迷いの繰り言 その続き

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 世の中の現実も合わせて教えてやって欲しい,ていうか教えろ

asahi.com:高校でマンガやアニメ学ぶコース増えています 大阪 - 社会

マンガやアニメを学べる私立高校が大阪で増えている。今春は新たに2校がコースや専攻をつくり、計4校になった。関西にはマンガやアニメを教える大学が多く、進路指導がしやすいうえ、文化としてのマンガの地位が上がり、保護者の抵抗感が薄らいでいることが背景にあるようだ

アニメーション作成ソフトが入ったパソコンを生徒1人に1台ずつ用意。1年生でデッサンなどの基礎を学び、2年生からペンの使い方やキャラクターデザイン、ストーリーづくりのほか、マンガ・アニメの発達史も勉強する。マンガを教える大学と提携してプロの作家らの指導を受けるほか、本格的なストーリーマンガの作品制作にも取り組む。

 知り合いの中に子供の頃から漫画やイラストを独学で描き続けていた奴がいるが,芸工系の大学に入ってデッサンなどの基礎技術の欠如を痛感したらしく,「ちゃんとした方法論を学びたかった」と言っていた.まあ,身内に芸術家がいるか,専門家を雇わない限り,今まで大学以前にこの手の技術を体系的に学ぶ機会は少なかったので,このような試みはいいことだと思う.


…同時に,学生の夢を完膚無きまでに破壊してくれるのであれば,ね.


どう控えめに考えても,現在の日本のアニメ,ゲーム,漫画業界は地獄以外の何者でもない.


アニメ製作現場の過酷な労働環境 :JAN JAN

(アニメ業界の:引用者注)「初任給が3万円」というケースも、決して珍しくはない。1日の平均労働時間は10.8時間、月間労働時間は推計250時間にも及ぶ。当然、土曜日も休めず、週6日の勤務(時には週7日勤務)となる。社会保険もない。通勤のための交通費さえ出ない事も珍しくない。

 動画担当者は殊更に過酷である。彼らのほとんどが出来高制で仕事をしており、その単価は一枚あたり平均186.9円。経験や実力のある動画マンでも、月300〜500枚描くのがせいぜいである。近年は、低賃金で仕事を引き受けるアジア諸国のアニメスタジオが、日本から発注されるアニメの制作(主に作画)を担っており、日本国内の仕事そのものも減少傾向にある。そのため、動画マンの73.7%の年収が100万円未満である。


2006年の記事だが,今でも状況に大差はないだろう.多くの地域の生活保護ですらブチ抜きそうな低額の給料という現実は半端な願望を打ち砕くのに十分である.


どんなに劣悪な条件でも「やりたい!」という若い人がいるから、
それが途切れることなく次々と現れるから、この状態でもなんとかなっているんだ・・・というようなお話でした。

憧れの職業だから、多少の勤務条件の悪さは我慢してでもやる。
そういう世界なんだと。
(同記事コメント欄)


 アニメへの愛につけこむ,つけこまざるをえない不健全体質のあらわれなのだが,このような現実を教えずに夢だけを煽って学生をその道に送り込むことは,もはや犯罪であるとも言える.個人的にはこの業界に入る資格がある人間は,絵を教える教師も含めた周囲全員から命がけで反対されて,なおもその道を選ぶ事が出来た人間だけだと思う.


 幸いにして現在では同人製作など,非商業で作品を多くの人に見てもらえる手段がある.アニメ,漫画コースを設立された高校におかれましては,作品を同人流通に乗せる方法論の講義と,業界を夢見る生徒への全力をかけた説得工作を強くお願いする次第である.


…ちなみに冒頭で書いた知り合いは,自分も含めた周囲の説得にもめげず,業界入りを諦めずに大学で勉強中である.その根性が報われる事を祈っている.